ライスの進化を数字で見る|プレミア最高の「前進させる」選手に
CBSスポーツのジェームズ・ベンジ記者が、ライスについて非常に興味深い分析記事を書いています。今季の彼に何が起きているのか、数字で丁寧に解き明かした内容でした。
「破壊者」から「組み立て役」へ
ライスはこれまで、ブライアン・ロブソン、スティーヴン・ジェラード、デイヴィッド・ベッカムといった偉大なイングランド人MFの系譜で語られてきました。自陣でタックルを決めて、そのまま駆け上がって終盤に決勝点を叩き込む。チームメイトが彼を「The Horse(馬)」と呼び、アルテタが一度も休ませようとしない理由がそこにあります。
ただ、ベンジ記者は彼らは皆、傑出した才能ではあったものの、言われていたほど「何でもできるMF」ではなかったと指摘。
イングランドが大きな大会のたびに渇望してきたのは、別のタイプでした。アンドレア・ピルロ、ルカ・モドリッチ、ロドリ。自分のパスで大一番の流れを支配できる選手です。そして今季、ライスがまさにそれになろうとしているというもの。
数字が示す変化
まず、ボール関与。先発選手の中で、ライスより多くのポゼッションに関わっている選手はプレミア90分あたりのタッチ数は87.5で、2位のウーデゴールを13%上回っています。パスの試行数、成功数、受け数も全てトップ。
そして最も注目すべきが、プログレッシブ・パス。
プレミアリーグ全体でトップの124本。しかも、出場時間が多いからではなく、同率首位のヤン・ポール・ファン・ヘッケより1試合分少ない出場時間だそう。90分あたり14.6本は、リーグの誰よりも6%多いようです。
ここで重要なのが、彼の過去3シーズンとの比較。加入からの3年間、彼のプログレッシブ・パスは90分あたり8.5本前後をうろうろしていました。プレミアの平均的なMFとしては悪くない数字ですが、特筆すべきものではなかったと。
実際、ウエストハムから来た当時の彼の弱点は「深い位置からの優れたパサーとは見られていなかったこと」。ボールキャリー、ボール奪取、無尽蔵のエネルギー。それがライスの特徴で、攻撃を組み立てる役割とは認識されていなかった。
なぜこの変化が重要なのか
アーセナルの従来のボール前進のハブはサリバでした。そのサリバが背中の負傷で長期離脱していた。昨季は攻撃の組み立てで行き詰まることが多く、ウーデゴールがCBのところまでボールを取りに降りていく場面が目立ちました。
ところが今季、ライスが前進の負荷を引き受けたことで、ウーデゴールの自陣でのタッチ割合が減り、その分が最終局面での関与に置き換わっている。つまり、チーム全体の構造が変わっていたという。
右サイドへの移動
昨季のライスは、左寄りの「左の8番」的な役割でプレーする時間が多かったのですが、今シーズンはルイス=スケリーが中盤の先発候補として台頭したことで、ライスが右サイドへ押し出されている。
ウーデゴール、ベン・ホワイト、サカが相手守備を混乱させた後に、遅れて飛び込んでくるという役割。
先日のリヴァプール戦でハヴァーツに合わせたクロスも、リーズ戦でブルーノに決勝点を演出したバックヒールもまさにこの形でした。
アシスト数はプレミアリーグ最多の5つ。しかも全てオープンプレーから。xA(期待アシスト)は90分あたり0.24で、ウーデゴールやギブス=ホワイト、エンソ・フェルナンデスと同等の水準。攻撃的サードでのタッチ数は減っているのに、クリエイティビティは増えている。
アルテタの言葉
アルテタがハル戦前の会見で語った内容も紹介されています。
「試合に勝ちに行くメンタリティ、そして自分のプレーに新しいレベルを加え、別の種類の脅威を持ち、より読まれにくくなること。我々はそこに多くの時間を費やしてきた。彼は自分のプレーのあらゆる部分を改善することに必死だ」。
そして、「彼の資質と能力を制限することはできない。彼は降りることもできるし、プレーを前進させることもできる。ボールを運べる。トランジションで驚異的になれる。デュエルに勝てる。飛び込んでパスを出せるし、遠くへ、左右どちらにもクロスを上げられる。どれでも構わない」。
「彼には提供できるものがたくさんある。ロングレンジのシュート能力も、もっと使うべきものだ。まだ得られるものがたくさんある」。とも。
世界最高になれるのか
記事の最後に、「バロンドールは現実的な道なのか」という問いにベンジ記者は、ロドリとモドリッチが可能であることを証明したものの、それには本当に特別な何かが必要。そして現時点で世界最高を基準にすれば、ライスにはまだ距離がある。
先日ライスの契約延長が「時間の問題」だとアルテタが語った件を記事にしましたが、こういう選手を引き留められることの価値が、改めてよく分かりました。
27歳。まだまだ伸びる。楽しみですね。ハリー・ケインも今にしてバロンドールを獲得したように、ライスの世界最高の姿はまだまだこれからですね!
(引用:CBS Sports)
ツォリス「モスケラが最初に声をかけてくれた」
そして、心が温まる話を一つ。ツォリスがロンドンでの生活とチームへの適応について語っています。
アーセナル公式のインタビューで、ツォリスはこう語りました。
「最初から本当にたくさんの選手が話しかけて、助けようとしてくれた。クリスティアン・モスケラが最初の一人だったと思う。プレシーズンの時に話し始めたんだ。彼は僕と年齢が近いしね。だからモスケラと言える」。
モスケラは2004年生まれの22歳。ツォリスは24歳。
ブルージュという小さな街からロンドンという巨大な都市への移籍は、大きな変化です。ただ、ロンドンにギリシャ人コミュニティが強く存在することも、彼の適応を助けているそうです。
「素晴らしい街だ。とても大きな街だね」とロンドンについて語っていました。
そして先日のリヴァプール戦。負傷明けにもかかわらず、彼が先発したことは多くの人を驚かせたのですが、アルテタはその理由について、トレーニングで彼が見せた「エネルギー」が起用を決断させたと語っていました。
そのことについて、ツォリス本人は、
「ただチームのために全てを捧げたかった。毎回のトレーニングで100%を出したかった」。
「以前は1か月チームから離れていた。負傷していたからね。でも今はまた良い状態だ。良いリハビリができたし、チームを助けるために体も強くなったと感じている」。
「いつも勝つために全てを捧げようとしている。決断を下すのは監督だ。プレーするチャンスをもらえて嬉しかったし、これからも常にパフォーマンスを出す」。
とコメント。
そして何より、モスケラが最初に声をかけたという話が良い。ロッカールームの中には確かに温かいものがある。メリーノが語っていた「監督抜きのミーティング」の話とも繋がります。
ツォリスの初ゴール、早く見たいですね!
(引用:football.london)
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