マルティネリ退団を巡って│プロセスに残った、ぬぐえない違和感


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マルティネリ退団を巡って│プロセスに残った、ぬぐえない違和感


マルティネリのアル・ヒラル移籍が正式に発表されました。移籍金£60m、クラブ史上最高額での売却です。

https://twitter.com/Arsenal/status/2095549885617668445

ただ、この件、単純な「お別れ」では終わりませんでした。移籍そのものより、そこに至るプロセスに対して、多くのサポーターが釈然としないものを抱えている。僕もその一人です。少し長くなりますが、何が起きたのかを整理したうえで思うところを書いてみました。

アルテタの名前がない、告別文

まず象徴的だったのが、本人がインスタグラムに投稿した告別文。

「その日が来た。正直、まだ別れの言葉を書く準備ができていないけれど、書いてみようと思う。7年前にここへ来たとき、僕は18歳になったばかりの、ただの少年だった」と、書き出された長文。

“シェフ、キットスタッフ、ドクター、ドアマン、警備スタッフ、メディアチーム、清掃スタッフ、フィジオ、そして2019年から今日まで自分の物語の一部となってくれたすべてのチームメイト”彼らへの感謝を、一人ひとり丁寧に列挙していました。さらにファンへ「初日から、あなたたちは僕を家にいるように感じさせてくれた」と綴り、クラブへは「僕を信じ、世界に自分を示す機会をくれてありがとう」と。最後は「35番から11番へ。一度ガナーになれば、永遠にガナー」で締めています。涙で書いているとも。

お気づきの通り、そこにアルテタ含むフロント陣の名前はありません。ドアマンや清掃スタッフにまで名指しで礼を述べておいて、監督、フロントには一言もない。これは偶然ではないでしょう。イギリスの各紙も「アルテタへの当てつけ」と報じたようです。7年間を共に過ごした監督の名前が抜け落ちている事実が、この夏に何があったのかを何より雄弁に語っています。

コミュニティ・シールドのメダル

では、何があったのか。ESPNの報道によれば、マルティネリはアルテタの構想から突然外されたことに深く失望していたそうです。シールドのシティ戦、そしてリーグ開幕のコヴェントリー戦、どちらもメンバー外となっていました。

そして決定的だったのが、シールド優勝のメダルを彼が受け取れなかったこと。スカッドに入っていなかったため、という理屈は分かります。ただ、マルティネリは昨季53試合に出場して11ゴール、22年ぶりのリーグ制覇に貢献した選手。ESPNは、この一件が本人を「大いに失望させた」だけでなく、チーム内の他の主力選手たちの間にも居心地の悪さを生んだとレポートしています。

クラブ側はあくまで戦術的な判断だと、BBCもアルテタ監督が自身の立場と外した理由を本人に説明したと報じました。ただ、この「説明」が行われたのは、既にメンバー外が既成事実になった後です。もっと早い段階で、もっと敬意のある形で話ができなかったのか。そこに引っかかっている人は多いと思いますし、実際にチームメイトからも居心地が悪くなったのでクラブ内でもそういった雰囲気はあったはず。

赤と青の石

そしてもう一つ、サポーターの間で議論を呼んだのが、アル・ヒラル入団時のプロモーション動画。赤と青の石が並べられて青を選ぶという演出。アーセナルの赤を捨てて、アル・ヒラルの青を取る、という分かりやすい構図ですよね。

これに対しては、一部のサポーターから「やりすぎだ」という声があったようですが、感情としては理解できます。7年間赤いシャツを着ていた選手が、移籍初日にわざわざそういう演出をする必要があったのかと。

ただ僕は、ここでマルティネリを責める気にはなれません。ああいうプロモーションは大抵クラブ側が用意するもので、新加入選手が断りにくいのもあるはず。そしてもっと言えば、そこまで感情を切り離してしまうほどの何かがこの夏の彼の中にあったのかもしれない。そう考えると、責めるより先に、やるせなさですね。

クラブを擁護できる部分、できない部分

ここからが本題。

まず、クラブを擁護できる部分。ここ2年、マルティネリがトップレベルのパフォーマンスを維持できていなかったのは事実です。昨季はリーグ戦で1ゴール、先発は11試合。25歳という年齢と契約残り1年という状況を考えれば、売却対象にしたこと自体は十分に理解できます。ここまでは、おそらく多くのサポーターも非難していないはず。

問題はその先、「どう売るか」というところ。

理想は、トップクラブへの移籍か、少しレベルを落としても競争力のあるクラブへの移籍。トロサールがベジクタシュへ行ったように、双方が納得できる形での別れ。ところが現実には、トップクラブは彼を欲しがらず、高額な移籍金を出せるプレミア中上位のクラブも見つからなかった。残ったのが、金額だけは出せるサウジだった。

ここで考えたいのは、その状況を誰が作ったのかということ。確かにマルティネリがこの2年結果を出せなかったのは事実ですが、高額な契約で彼をキープし続けたのはクラブ側なんですよね。市場価値が下がるリスクを承知で契約を延長し、いざ売ろうとしたら買い手が限られていた。その責任は、選手ではなくクラブが負うべきものでしょう。ブラジル代表でアンチェロッティがマルティネリを上手に起用したのを見れば、活かしきれなかったのはアルテタ監督含むコーチ陣の責任もあるはず。

そうにもかかわらず、実力行使に出た。メンバーから外し、メダルも渡さず、行き場をなくして本人が折れるのを待つ。結果として£60mという史上最高額は手に入りましたが、失ったものもある。それが今回の告別文に表れている気がします。

財務状況を見ると話はもっと複雑になる

ここで、クラブの財務状況を見ておきたいと思います。財務を専門に分析しているアカウント(Magic hat)が、直近でかなり詳細な推計を公開していました。

https://twitter.com/themagic_tophat/status/2095494475267141943

要点を挙げると、まず収益は£800m超で、これはプレミアリーグ史上最高額。同氏の実際の推計値は£815mです。一方で2026年のフットボール関連コストは約£500m、26/27シーズンは£510mと予測。リヴァプールもほぼ同水準で、マンチェスター・シティは£600m超と見られています。

そして注目したいのが、UEFAのフットボール・アーニングス(24/25〜26/27の3シーズン)は€200〜250mのプラス。この規則の下限は「マイナス€60m」ですから、余裕どころの話ではありません。EBITDAは2026年と26/27で約£200mが目標で、同氏は25/26シーズンのアーセナルがプレミアリーグ全クラブの中で最大のEBITDAになると予想しています。純移籍債務は£300m以下で、シティ、リヴァプール、マンUの£375〜450mより大幅に低い。しかも今シーズン中に、その3分の2(£200m)を返済できるポテンシャルがあるとのこと。

結論として、アーセナルの財務は非常に強固で、規則の遵守に関する懸念は一切ない。今後、年間£150〜175mの純支出は現在のオーナー体制下で十分に持続可能である、と書いています。

つまり、「健全経営を守るために今夏どうしても利益を上げる必要があった」という説明は少なくともこの分析を見る限り、そこまで切迫したものではなかった可能性がある。もちろん外部からの推計ですし、クラブ内部の判断材料は僕らには見えません。MLSへの売却を画策していたという話もその文脈で出てきたものでしょう。ただ、財務が「絶対に売らなければ立ち行かない」水準ではなかったのだとすれば、あそこまで強引な進め方をする必要が本当にあったのかという疑問はどうしても残ります。

それでも、こういうことは起きる。だから次にどう活かすか

公平を期すために書いておくと、こうしたやり方は決して珍しいものではありません。バルセロナ時代のペップがエトーに退団を促した件など、強豪クラブの歴史には似た話がいくつもあります。強固なチームを作り上げる過程で、選手の入れ替えは避けられない。アルテタが冷徹な判断を下せる監督だからこそ、22年ぶりのリーグタイトルを獲れたという側面も間違いなくあるでしょう。優しいだけでは勝てない世界です。

ただ、これを「仕方ない」で終わらせてしまうと、同じことがまた起きます。そして今のアーセナルには、同じ立場になり得る選手が何人もいるんですよね。ジェズス、ヴィエイラ、ネルソンと整理が続いたこの夏を経て、次に序列が下がるのは誰か。冷静に考えれば、ヨケレスかもしれないし、スビメンディかもしれない。今は主力の彼らだって、2年後にどうなっているかは分かりません。

だからこそ、今回の件はクラブにとって学習の機会であってほしい。契約更新の判断をもっと精密にすること。構想外になった選手には早い段階で正直に伝えること。そして売却先を探す段階で、選手側の希望も交渉材料に入れること。この3つができていれば、今回のような後味にはならなかったはずです。逆に言えば、これができるクラブになれば、次の「マルティネリ」は生まれずに済む。サポーターが何を求めているのか、アーセナルのアイデンティティとなっている部分の理解が深まって欲しい気持ち。もちろん現場では勝利が最優先されるのは間違いない。ただ、なんだか、、うーん。頼む!みたいな?

未来のアーセナルに期待したいこと

財務データが示していたのは、アーセナルが年間£150〜175mの純支出を継続できる極めて強固な土台を持っているということ。プレミアリーグ史上最高の収益、最大のEBITDA、他のビッグクラブより圧倒的に少ない移籍債務。つまりこのクラブは、これから数年にわたって毎年ちゃんと勝負できる立場にいるという状況にある。

その恵まれた立場をどう使うか。ここが問われていると思うんですよね。潤沢な資金があるからこそ、無理に選手を追い出さなくても回る。契約最終年の選手に慌てて実力行使をしなくても、余裕を持って着地点を探せる。そういうクラブになれるだけの財務体力はもうある。あとはやり方の問題です。

思えばあの頃、£6mでやってきたブラジルの少年が22年ぶりのリーグタイトルを掲げるところまで連れて行ってくれるなんて誰も想像していませんでした。だとすれば今いる若い選手たちの中にも同じ物語を書く選手がいるはずです。それを見届けるのが、僕らサポーターの楽しみでもある。

今回の一件は、正直モヤモヤが残りました。それは間違いない。でも、そのモヤモヤをクラブがちゃんと受け止めて次はもっと上手くやってくれるなら、この夏も無駄にはなりません。強さと誠実さを両立できるクラブ。勝ちながら、送り出し方も間違えないクラブ。そういうアーセナルを見たいと思っています。

マルティネリが7年間で見せてくれたものを土台にして、ここからさらに良いチームを作り上げていく。その姿を、これからも楽しみに見守りたいですね!!!


ここまで読んでくださってありがとうございます!!

それでは

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「マルティネリ退団を巡って│プロセスに残った、ぬぐえない違和感」への4件のフィードバック

  1. なかなか複雑な事情ですね。
    今季はLWのタスクが簡略化されシンプルで精度を求めつつ、カラフィオーリのインナーラップやサカウーデの得点力を引き出す攻撃がテーマらしく、ここ数年の右に比重を置きすぎてRSBが壊れまくりサカまで壊れてきたマンネリを総括した末の左サイド再活性化でしょうし、ドリブルが持ち味のLWはよほどの逸材でなければ…という方針と解釈できます。
    タイトル獲得できたから良かったものの、型に嵌まって対策されきった攻撃戦術でしたから、ここ数年の苦労を踏まえて更にクラブを高めるために最初に犠牲になったのが彼だったと。
    アーセナルをCLPLの優勝争い常連に戻した功労者のうち、代役が見つかり値のつく選手から売ることになるのは仕方がなく、トーマス~ジェズス獲得あたりで給与体系がかなり引き上がったことも原因ですから、こうなったのはある意味苦肉の策で仕方がなかったですね。

    1. 仰るとおりですね。最初の犠牲という表現がしっくりくる気がします。そして、それは仕方がなかったと受け入れる他無いという。
      攻撃の形を再編するにあたって、マルティネリが輝いていた頃のようにジャカがNo.8に居るわけではないですし、苦肉の策ですよね。
      ただやはりマルティネリはチームに合わせた結果、持ち味のスピードのあるドリブルを失ったとも取れるので余計に苦しさがある気がします(泣)

  2. 僕は理解できない、何故ならアルテタのサッカーには矛盾が生まれているからです、アルテタのサッカーは一言でいうとコントールとアイソレーションです、それがアルテタサッカーの軸だったはずなのに、なぜドリブル突破がきたい出来るマルティネッリを売るのかまず、マルティネッリの言い訳をすると無理やり昨シーズンは中にはいらさられていました、それはアルテタが悪いし、色んな意見がありますが彼は生粋のウィングストライカーだと思います、そのため、サイドにスタート位置を取る必要があります、しかしアルテタが良くも悪くもカラフィオーリの攻撃センスに頼った結果マルティネッリがいきない結果になりました、またマルティネッリが苦しんだ理由にCenterFWがギョケレシュやハヴァーツメリーノみたいに、左サイドに流れない選手に変わった事ジャカからライスにかわり左サイドに流れてくれない結果、マルティネッリが裏抜けを出来なくなっていました僕が見る限り、アルテタがそれを整備した痕跡がありません、またアーセナルは主力がアラサーに近く今シーズン勝負の年でありギャンブルしないといけないのに、アルテタたちは財政をとった、これは理解に苦しみます、更にはビックゲームではアルテタは低いブロックからの攻撃を好みますが、低いブロックから長い距離を出てこれる選手がこれで居なくなりました、これからアーセナルと対戦するチームはハイラインをやリやすくなったし、右SBを上げやすくなったに違いありません、またマルティネッリはカラフィオーリやスケリーが苦手なスピードタイプに対しても対応出来るために、守備強度も減った事になります、みんなマルティネッリの攻撃力をなげきますが、確かに上位互換のオーバメヤンやエムバペに劣りますが、彼はスタミナがあるために後半になると、ハキミ相手にも1対1でもドリブルで勝てるのです、彼を失うのはボールキープによる支配とミドルシュートをエルかわりにアーセナルの攻撃テンポのスローダウンとロングカウンターの減少を意味します、

    1. 全くの同意見です!
      クラブの内側で起こっていることは分かりませんが、仰るとおりチームのスタイルに合わせた結果マルティネリの良さを消した+ライスのNo.8起用に固執せず左利きの選手を入れるなど、マルティネリを活かす形を模索しても良かったのでは?と個人的に思います。確かにハイラインを取りやすいチームが増える可能性も大いに有りえるかと。ただ、ライスはNo.8で輝き、PLタイトルを手にしているわけですから言い返せないというのがある意味悔しい部分です。
      あとはブルーノ・ギマランイスを獲得したことで改めてマルティネリが輝くチャンスがあると考えていただけに、やはり残念な気持ちがありますね。

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