シティ有罪判決とプレミアリーグの強硬姿勢|アーセナルが失ったもの
ついに、という言葉しか出てきません。マンチェスター・シティの財務規則違反問題について、独立委員会が判決を下し、プレミアリーグが公式声明を発表しました。
結論から言えば、シティは重大な財務規則違反に関するすべての訴因で有罪。そして非協力に関する訴因についても、その大半で有罪と判断されました。
プレミアリーグの声明は、異例の強さ
まず注目したいのが、リーグ側が公表した委員会の認定内容です。かなり踏み込んだ、厳しい文言が並んでいます。
委員会は、シティが複数の商業パートナーとの間で「見せかけ(sham)」の契約を取り交わし、当事者間の実際の合意内容を偽って表示していたと認定しました。具体的には、スポンサー企業が実際には契約金の一部しか支払わず、残りをアブダビの所有者側が負担していたという構図。加えて、虚偽の財務諸表の提出、プレミアリーグおよびUEFAの支出制限違反も認定されています。
そして最も重い一文が「クラブはその行為により、明確にプレミアリーグ規則を回避する意図を有していた」。さらに「プレミアリーグの調査を止め、妨害しようとする協調的な努力を行った」。
ここまで断定的な表現をリーグが公表するのは異例で、長年シティの防御は否認と遅延の上に成り立ってきましたが、判決はそれを真正面から切り裂いた格好です。
シティ側は「失望し、驚いている」とし、「意見書には法、原則、事実に関する明白な重大な誤りが含まれており、安全ではない」として上訴する方針を表明しています。
この先、何が待っているのか
制裁内容はまだ決まっていません。プレミアリーグ規則上、勝ち点剥奪、罰金、そしてリーグからの除名まで幅があります。
ここで比較対象になるのが、エヴァートンとノッティンガム・フォレスト。両クラブは2023/24シーズン、収益性・持続可能性規則(PSR)のたった1件の違反で勝ち点剥奪を受けました。エヴァートンは当初10ポイント。それを基準にすれば、100件超で有罪となったシティがどうなるのか、、、想像もつきません。実際、AFPも「その基準に照らせば、シティはほぼ確実に降格に直面する」と書いています。
補償請求も本格化します。先日お伝えした通り、アーセナルは補償請求の権利を保全したクラブで、スパーズ、リヴァプール、ユナイテッドが続いています。金額は一部クラブにとって£200mを超える可能性があるとも。
前例としては、今年6月エヴァートンは財務規則に違反したシーズンにバーンリーを抑えて残留したことへの補償として£35mを支払うよう命じられました。1件の違反でこの金額なら、9シーズンにわたる大規模な違反の場合はどうなるのか。
さらに上訴が終わった後も、シティのアブダビ側オーナーが仲裁プロセスの手続き上の問題を争って英高等法院に持ち込む可能性まで指摘されています。この話は、まだ何年も続きます。
アーセナルが失ったもの
ここからは、アーセナルサポとして書いておきたいことですね。
対象期間である2009年から2018年。この時期のアーセナルが何をしていたか、思い出してください。エミレーツ・スタジアムの建設費返済。
2006年の移転以降、クラブは巨額の債務を抱え、選手補強を極限まで切り詰めながらCL出場権だけを守り続ける苦しい時代を過ごしました。ファブレガス、ナスリ、ファン・ペルシー、そしてサニャ。主力が次々と流出していった時期です。ナスリやサニャが向かった先はほかならぬマンチェスター・シティでした。
あの頃、「クラブの身の丈に合った経営だから仕方ない」「借金を返し終えれば戦える」と自分に言い聞かせてきました。実際、ヴェンゲル監督はその制約の中で毎年CL出場権を確保し続けた。今思えばとんでもない偉業ですね。
そして、その同じ期間にシティは規則を回避しながら成長していた。この対比は正直かなりこたえます。
ルールを守って苦しんだクラブと、ルールを回避して勝ったクラブ。もしあの時期に公正な競争環境があったならアーセナルの歴史はどうなっていたのか。2013/14シーズン、最後までタイトルを争いながら失速した年。2015/16シーズン、レスターの奇跡の裏で2位に終わった年。
そしてアーセナルだけの話ではなく、リーグカップ決勝で敗れたアーセナルやサンダーランド、FAカップのストーク・シティ、タイトルレースで競り負けたユナイテッドやリヴァプール。CL出場権をあと1つ逃したクラブも数え切れないほどあるはずです。レスターが2016年の優勝の翌年以降、もう1シーズンCL出場権を手にできていた可能性だってある。スパーズがポチェッティーノ時代にタイトルに手が届いていた可能性だってある。
ポチェッティーノ自身、今回の判決について「もし事実なら、それはスポーツにおける欺瞞の時代を裏付けることになる」と悲しみを表明していました。
個人的な見解
正直に書きます。僕は完全にクロだと思っています。
もっと正直に言えば、粉飾決算でなくとも、ビッグクラブが何かしら資金面で優遇を受けているであろうことは分かります。スポンサー契約の金額にオーナーの意向が反映されることや、確かアーセナルもスポンサーではないですが、コロナ禍の際にKSEへ借金の借り換えとかしてたはず。(曖昧ですみません)
ただ、今回のシティの件で最も悪いのは、そこではありません。「粉飾決算などそもそも存在しない」と答弁し続けたうえで、資料の提出を拒み、調査に非協力的な姿勢を貫いたこと。これに尽きます。委員会が「調査を止め、妨害しようとする協調的な努力」と認定したのはそこなんですね。
疑問なのは、なぜここまで膨らんだ後に明るみに出たのかということ。きっかけはルイ・ピント氏によるリークで、それをドイツのシュピーゲル誌が2018年に報じたところから始まりました。つまり内部告発がなければ、この件は永遠に闇の中だった可能性が高い。
冷静に考えれば、こんなことがまかり通るはずがないんです。どこに抜け穴があったのか。監査はどう機能していたのか。そして当時、シティの乱暴なやり方をどこか是とする空気がリーグ全体にあったのではないか。「新しいオーナーが来て、クラブが強くなる」という物語が心地よく消費されていた側面が確かにあったと思います。
そこはプレミアリーグという組織の問題でもあります。ヘンリー・ウィンター氏が書いていた通り、「競技としてのプレミアリーグのイメージは、これによって損なわれた。強固なガバナンスを実行できる組織としてのイメージは、これによって高められた」と。
ちなみに超個人的な見解ですが、マンチェスターCの監督や選手には否がないと思っています。どのレベルの監督や選手であっても野心があって、給料が高く、競争心が煽られる環境に身を置きたい気持ちは大きいはずそういう意味では表面上でクリーンさを装って裏で工作していたとすればそれらの監督、選手も被害者だと思います。監督や選手からしてもこの期間のタイトルが無いものとして扱われるはずですし(ただしベルナルドは許さん)。アグエロやダビド・シルバなど、マンチェスターCのレベルを上げた選手たちはこの状況を悲しんでるでしょうね。
それでも
今さらトロフィーを受け取っても、僕は嬉しくありません。あの当時に、正しく戦って勝ちたかった。それだけです。
ただ一つ言えるのは、アーセナルはあの苦しい時代をルールの中で耐え抜き、そして昨季、22年ぶりのタイトルを自分たちの力で取り戻したということ。健全経営を続けながら、プレミアリーグ史上最高の収益を記録するクラブになった。そのやり方は間違っていなかった。
この件はまだ終わりません。上訴があり、制裁があり、補償請求がある。どういう結末になるのか引き続き注目していきたいですね。
(引用:Premier League)
ここまで読んでくださってありがとうございます!!
それでは
最新情報はTwitterで更新しています!是非フォローお願いします!